“例えば、「パパ」が、遺伝子組み換えトウモロコシは「農薬成分を作るから危ない」と言って、防護服と防護マスクをして、子どもと一緒に遺伝子組み換えトウモロコシの畑の中を走り回るシーンがあるんです。 防護服って苦しいですよね。だから、走り回ったあと「苦しい」と言って倒れるんですよ。恐らく農薬散布のイメージがあって、防護服、防護マスクを子どもにかぶせたんだろうと思うんですけど、遺伝子組み換えトウモロコシというのは、トウモロコシに農薬がべっとりついているとか、畑が農薬でモクモクしてるとか、そういうことでは全くないんですね。 「危ない」と思った時に「どうして危ないのか?」まで調べていれば、実は防護服や防護マスクをする必要は全くないことがわかったはずです。遺伝子組み換えトウモロコシは、虫といっても、殺虫剤と違い特定の害虫だけを殺す仕組みになっています。 先ほど、唐木先生から遺伝子はタンパク質を作る設計図だというお話がありました。遺伝子組み換えトウモロコシが作るBtタンパク質は、有機農業でも使われる微生物の殺虫成分で特定の虫の消化管に入った時、ペプチドの形になります。 また、その虫、正確にいうと鱗翅目の虫なんですけども、鱗翅目の虫が特有に持っている消化管の中の受容体にBtタンパク質のペプチドがくっつく。で、くっついた時に初めて、その消化管を壊してしまうという作用を起こします。そうすると、その虫は、物を食べても、消化管が壊れているので、食べたものを消化出来ずに餓死してしまうという仕組みなんですね。 でも、鱗翅目以外の虫や、牛や豚や鶏といった家畜、人間は、消化の仕組みも違いますし、決定的なのは、その受容体を、鱗翅目の虫以外のどの生き物も持っていません。なので、Btタンパク質を食べたとしても、くっついて消化管を壊すところがない。タンパク質というのは20数種類あるアミノ酸がつながったものであり、アミノ酸の種類やつながり具合によってタンパク質の性質が決まるのですが、タンパク質が分解されてアミノ酸になってしまえば、アミノ酸はアミノ酸なんです。 ですので、Btタンパク質とはいえ、消化すればアミノ酸ですから、我々がそれを食べたら栄養素として吸収されるんです。映画に出てくる「パパ」がこういう仕組みまで調べていれば、パパと子どもでコーンフィールドを走るというせっかくのステキな場面で、子どもに防護服を着せて苦しいという思いをさせなくても済んだのにと残念に思うんですね。”
— ジャンクサイエンス(ニセ科学)の見分け方、本来の科学であれば “おかしなもの”が突然出てくることはない~「“安全性”を読み解くための科学リテラシー講座」前編~ (2/3)
